- 行政保健師は異動が多いって本当?
- 都道府県か市区町村かで迷っている…
- 都道府県と市区町村で働く保健師の勤務場所の違いは?
一言に「行政保健師」と言っても所属する自治体や機関によって業務内容や勤務先も様々です。
行政保健師にも様々な種類や勤務先があり、いまいち頭の中で整理できていないという方も多いのではないでしょうか?
行政保健師を目指すにあたり、どんな自治体のどんな機関で働くことになるのかをしっかり理解しておかないと入職後にギャップを感じたり後悔する可能性があります。
行政保健師は各自治体に所属し勤務する保健師のことを言います。同時に各自治体に採用され働く公務員です。よって行政保健師は所属する各自治体が管轄する機関で保健師として勤務することになります。
私は都道府県に所属し保健所へ配属されました。
この記事では、行政保健師の自治体ごとの棲み分けや勤務先についてを簡潔に整理してまとめています。
保健師全体としての働く場所とその割合
保健師の種類は働く場所によって、以下のとおり様々な呼ばれ方をします。
- 行政保健師(自治体)
- 学校保健師(学校)
- 産業保健師(企業)
- 病院保健師(病院)
これらは単純に働く場所の違いで呼ばれ方が違うだけです。保健師の国家資格以外に何か特別な資格が必要ということはありません。
保健師には様々な勤務先がありますが、令和4年末の状況を見ると以下のようになります。(小数点第二位四捨五入)
就業場所 | 割合(%) | 人数(人) |
---|---|---|
病院 | 7.7 | 4,666 |
診療所 | 4.0 | 2,396 |
保健所 | 17.2 | 10,333 |
都道府県 | 3.0 | 1,821 |
市区町村 | 51.6 | 31,104 |
事業所 | 7.0 | 4,201 |
その他 | 9.6 | 5,778 |
上の表の勤務先の保健所、都道府県、市区町村に該当するのが行政保健師ということになります。保健師全体の7割以上が行政保健師として勤務しているということが分かります。
行政保健師としての働く場所
行政保健師に共通して言えることは、各自治体すなわち各都道府県や各市区町村に所属し勤務しているということです。つまり、同時に公務員という扱いです。
国家公務員として働く保健師も中にはいますが、数はかなり少なく特殊なのでこの記事では割愛します。
- 市区町村保健師の勤務先は?
- 都道府県保健師の勤務先は?
市区町村保健師の勤務先は?
市区町村保健師の勤務先を解説する前に、以下の2分類に分けて考える必要があります。
- 特別区・中核市・政令指定都市
- 通常の市区町村
どちらの市区町村であっても人事異動によるローテーションはありますが、所属する市区町村が管轄する機関において行われます。
よって、都道府県職員のような遠距離の引っ越しや単身赴任を要する遠方への人事異動はほぼないと思っていいでしょう。
ただし、県や市区町村間で一定期間人材交流や人材派遣をする自治体もあります。
特別区・中核市・政令指定都市の場合
特別区、中核市、政令指定都市は以下のような自治体です。
- 特別区
- 通常、都道府県に属する市区町村とは異なる特別な地方自治体の形態。現在の日本の特別区は、東京23区のことを指す。
- 中核市
- 周囲の市区町村と比べて人口規模が大きく、都道府県内で中心的で重要な地位をもつ市のこと。
- 政令指定都市
- 人口、経済的規模が大きく、中央政府から幅広い自治権を与えられている中心の都市のこと
特別区・政令指定都市・中核市所属の保健師の場合、保健所で働くことがあるのが特徴的です。保健所と聞くと都道府県の機関のように思えますが、特別区や政令指定都市、中核市は独自に保健所を持っています。
基本的に特別区や中核市、政令指定都市は「地方自治法」や「保健所法」に基づいて独自に保健所を設置することが求められているからです。
保健所以外では市役所や区役所、各地域の保健センター(自治体により名前は様々)、地域包括支援センター等で勤務することになります。
よって、主に保健所⇔市役所・区役所⇔保健センター⇔地域包括支援センターで人事異動がありローテーションすることになります。
ただし、一部の都道府県権限で行う保健所業務については特別区や中核市、政令指定都市であっても都道府県の保健所が担うものもあります。
特別区・中核市・政令指定都市は通常の区や市の保健師業務に加えて、一部を除く保健所業務も担うことになります。
通常の市区町村の場合
架空のA県の図を示します。
通常の市区町村の場合は独自に保健所を持たないため、主に市役所・区役所・町役場・村役場⇔保健センター⇔地域包括支援センター等で人事異動がありローテーションすることになります。
なお、保健所を持たない市区町村での保健所業務については、その市区町村を管轄する都道府県の保健所が行うという仕組みです。
A県 | |||||||
B市 | C市 | D市 | E町 | F町 | G村 | ||
自治体規模 | 中核市 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
保健所設置 | |||||||
保健所業務 | B市 | A県 |
上の表のように、A県のB市が中核市の場合、基本的にB市は独自に保健所を持ちますので、B市の保健所業務はB市が行います。
一方、特別区でも中核市でも政令指定都市でもないC~G市町村の保健所業務はA県のそれぞれのC~G市町村を管轄する保健所が担います。
都道府県保健師の勤務先は?
架空のA県を図に示しました。
都道府県に所属する保健師は都道府県が管轄する機関で働くことになります。一番多いのが保健所です。
また、勤務先に「都道府県」という曖昧な区分がありますが、実態は保健所以外の都道府県の機関で保健師として働いているということです。
以下に具体例を挙げます。
- 本庁(都庁・道庁・府庁・県庁の各課)
- 児童相談所
- 精神保健福祉センター
- 都道府県立大学の健康管理室
都道府県の保健師に採用されると、上記の都道府県の機関の間で人事異動があります。これらは都道府県内に散らばっている事が多いので、遠方への人事異動が恒常化しています。
特に保健所に関しては、面積の大きな都道府県では圏域ごとに設置されているため人事異動の時期は毎年騒がしくなります。
とはいえ、家庭や生活拠点のある人は基本的になんとか通勤できる範囲内での異動というのが基本になっています。
単身のうちは引っ越しを伴う異動は当たり前です。
まとめ
行政保健師にも所属する自治体や自治体の規模によって様々な特徴や勤務先があることが分かりましたでしょうか。自治体ごとの勤務先を一覧にまとめると以下のようになります。
都道府県 | 市区町村 | |
---|---|---|
政令指定都市 特別区・中核市 | 通常の市区町村 | |
保健所 都道府県庁 児童相談所 精神保健福祉センター 都道府県立大学 など | 保健所 市役所・区役所 保健センター 地域包括支援センター など | 市役所・区役所 町役場・村役場 保健センター 地域包括支援センター など |