- 看護師を辞めようと思っているけど、辞めない方がいい?
- 辞める人はどんな理由で辞めているの?
- 辞める時はどんなことに注意したらいい?
- 自分に合った職場はどうやって探せばいいの?
さまざまな理由から退職を考える看護師は多いです。
実際、看護師の離職率は他の職種と比べて高い傾向にあり、雰囲気や環境によっては、退職の意思すら表明できない職場もあります。
看護師の仕事は想像以上にきつく、今や転職経験のある看護師は当たり前になってきています。
この記事では、看護師の離職率や離職理由、離職を考える際のポイントについて詳しく解説します。離職を考えている自分の状況を整理し、冷静に今後のキャリアプランを立てるようにしましょう。
看護師の離職率
離職率は看護師の労働環境や職場満足度を反映する指標として重要です。算出方法は年度末の在籍者数と年間退職者数から計算されます。
具体的な離職率を以下の3項目に分けて紹介します。
- 看護師全体の離職率
- 都道府県別の離職率
- 新卒看護師の離職率
看護師全体の離職率
2011年以降は離職率は常勤看護職員で12%前後を記録していました。2020年には新型コロナウイルスの影響で一時的に上昇しましたが、2021年には10.6%であり、改善を見せています。
病院によって異なりますが、近年はワークライフバランスの重視や労働環境改善の影響で離職率は低下傾向にあります。安定した医療を提供するために、看護職員の確保と定着に向けた継続的な取り組みが必要です。
都道府県別の離職率
看護師の離職率の全国平均は12%ですが、都道府県によって大きな差があります。
最も高いのは東京都の15.6%です。次に高い大阪府が14.7%で、3番目は14.5%の沖縄県という結果となりました。一方で、最も低い離職率を記録したのは9.8%の新潟県、次に低いのが秋田県の10.1%です。
都市部や観光地など、人口が多く医療需要の高い地域ほど看護師の離職率が高くなる傾向があります。反対に、地方や過疎地域では離職率が低くなっています。
地域差が生まれる要因は以下のとおりです。
- 人口が多い都市部での激務
- 人間関係によるストレス
- 将来の安定性
人口が多ければ、その分関わるスタッフや患者の数も増えるので、ストレスも増大します。
新卒看護師の離職率
新卒看護師の離職率は看護師全体の離職率と比べて約10%とやや高い数字です。特に1年目の離職率が最も高くなっていますが、2年目以降は徐々に低下する傾向にあります。
新卒看護師の離職率が高い理由は以下のとおりです。
- 理想と現実のギャップ
- 業務が多く複雑
- 人間関係の構築が困難
- 自己肯定感の低迷
高い志と希望を持って入職したにも関わらず、業務量の多さや患者・上司からの叱責、理不尽な指導に絶望する看護師も多いです。職場環境が悪いと、いつまで経っても自己肯定感が上がらないので離職率も高くなりやすいです。
看護師の離職率が高い病院の特徴
看護師の離職率が高い病院に共通する特徴を紹介します。具体的には以下のとおりです。
- 規模が小さい
- 人手不足が著しい
- 給与や待遇が悪い
規模が小さい
規模が小さい病院では、看護師の離職率が高い傾向にあります。
要因はスタッフの数が少ないことで1人当たりの業務量が多くなり、激務になりやすいことです。他にも教育・研修制度が不十分であることや、最新の設備・医療機器が整っていないことも要因の一つとされています。
一方で人間関係が密接になりやすく、コミュニケーションがとりやすい小規模病院ならではのメリットもあります。特定の科に縛られず、さまざまな業務を経験できるので幅広いスキルを身に付けることが可能です。小規模病院で働く際は、自身のキャリアプランと照らしあわせ、メリットとデメリットを十分に検討しましょう。
人手不足が著しい
多くの病院で慢性的な看護師の人手不足が深刻な問題となっています。
残業や休日出勤が当たり前になるなど、現場の看護師は過酷な労働環境に置かれているのが現状です。
人手不足により看護師1人当たりの業務量が増加すると、十分な休憩時間が取れない状況が続いてしまいます。結果的にストレスや疲労が蓄積され、新たな離職者が出る悪循環に陥ります。看護師の心身の健康状態が悪化することでバーンアウトのリスクや患者へのケアが不十分になることも懸念される点の一つです。
人材確保が困難な現状で、採用活動が長期化することも珍しくありません。人手不足は看護師個人の問題だけでなく、医療の質にも深刻な影響を与えています。早急な対策が求められる課題の一つです。
常に人手不足で求人を出し続けている病院は要注意です。
給与や待遇が悪い
給与や待遇などの条件面が悪いことは離職率を高める要因の一つです。多くの看護師が、適切な報酬や労働条件を求めて転職を考えています。
求められる条件は以下のとおりです。
- 給与水準の向上
- 昇給・昇進の機会
- 適切な残業代の支払い
- 夜勤や休日出勤の手当
- 賞与の金額
- 有給休暇の取得
待遇や労働条件が適切でなければモチベーションが低下し、より良い待遇を求めて転職を考えます。看護師の待遇や労働条件の改善など、離職率を下げる対策が必要です。
看護師の離職率が低い病院の特徴
看護師の離職率が低い病院に共通する特徴について解説します。
具体的に以下の3つの特徴があります。
- 福利厚生が充実している
- 職場の雰囲気が良い
- 休みやシフトの調整がしやすい
福利厚生が充実している
福利厚生の充実は看護師の離職率を下げる要因の一つです。多くの病院では、さまざまな福利厚生制度を整えており、看護師の働きやすい環境づくりに力を入れています。
福利厚生制度は看護師の生活を支え、仕事と私生活のバランスをとるのに役立ちます。
具体的な福利厚生は以下のとおりです。
- 人間ドックなどの健康診断
- 育児及び介護休暇制度
- 住宅手当などの家賃補助
- 退職金制度
- 職員寮の提供
- 保育所の設置及び利用補助
- 食事及び通勤などの手当
- 食堂の充実
- 交通費全額支給
- フレックスタイム制
- メンタルヘルスケア
看護師が自身のスキルアップを図るための教育制度や研修制度、キャリアアップのための資格取得支援制度も重要です。
充実した福利厚生は看護師の心身の健康を保ち、働きやすい環境を整えるのに役立ちます。結果として看護師の仕事への満足度が高まり、離職率の低下につながります。
ブラック病院ほど、福利厚生が不十分なので、転職の際にはよく確認しておきましょう。
職場の雰囲気が良い
看護師の離職率を下げるには職場の雰囲気が良いことが重要です。良好な職場環境は、スタッフのモチベーションを高め、仕事への満足度を向上させます。
雰囲気が良い職場に共通する具体的な特徴は以下のとおりです。
- オープンなコミュニケーションがとれる
- チームワークが高い
- スタッフ間に信頼関係がある
- 新人サポート体制が充実している
上記のような環境だと看護師が安心して働けるため、仕事のストレスが軽減されます。
例えば、手が空いていれば率先して保清や処置の手伝いに入ったり、緊急入院の手伝いを率先して行ってくれたりする職場はチームワークや信頼が高いと言えます。
他にも互いの仕事を認め合い、褒め合うことで看護師の自己肯定感を高め、仕事へのモチベーション維持にもつながります。
良好な職場環境をつくるうえではハラスメント防止も不可欠です。看護師が長期的に定着している病院では、安心して働ける環境づくりへの取り組みが徹底されています。
休みやシフトの調整がしやすい
看護師が休みを取りやすいことや、シフト調整がしやすいことも離職率低下につながります。プライベートの時間が適切に取れていれば、仕事へのストレスが溜まりにくくなるからです。
離職率の低い病院では、以下のようなシフト管理が行われています。
- 希望通りのシフト調整ができる
- 適切な勤務時間が整えられている
- 有給休暇の取得がしやすい
離職率が高い病院は、勤務時間が適切でないことや休日取得が取りにくい環境であることが多いです。休日取得やシフトの調整がしづらい労働環境は看護師の離職につながり、人手不足の悪循環に陥ります。
一方で、離職率が低い病院は休日取得やシフト調整の管理が適切です。働きやすい労働環境は看護師のモチベーションが上昇するため、離職率の低下と人材確保につながっています。
急遽、代理で出勤した場合は別の日に代休が取れるなどの調整管理をしてくれる職場は働きやすい場所と言えます。
看護師の離職理由
看護師が離職する理由について解説します。主な退職理由は以下のとおりです。
- ライフステージの変化
- 人間関係の問題
- 労働環境の不満
- スキルアップやキャリアアップ
- 身体的・精神的な負担
ライフステージの変化
多くの看護師が、家庭生活と仕事の両立に悩みを抱えているのが現状です。
特に結婚や出産などのライフステージの変化は看護師の離職理由として大きな影響を与えます。夜勤や不規則な勤務体制が理由で家庭生活との両立が難しいからです。
他にも以下の理由で離職を考える看護師が多くいます。
- 育児と仕事の両立
- 子育てへの専念
- 配偶者の転勤
- 妊娠中や産後の体調
子どものいる看護師にとっては、保育施設の不足や保育時間、勤務時間の不一致も大きな問題となっています。子どもの教育環境への配慮や、家族と自分の時間を大切にしたい思いから現在の仕事を見直す看護師も多いです。
ライフステージの変化は看護師の離職を考えるきっかけとなります。看護師の継続就業には、個人の生活と仕事の調和を図ることが不可欠です。
不規則勤務の肉体労働なので、ライフステージの変化で離職する看護師は多いです。
人間関係の問題
看護師の離職には人間関係の問題も大きく関係しています。仕事の満足度や生産性を向上させるためには職場での良好な人間関係が重要です。
具体的には、以下のような人間関係の問題が挙げられます。
- パワーハラスメント
- 同僚との対立
- チームワークの欠如
- コミュニケーション不足
- 新人看護師へのサポート及び指導不足
- いじめ・嫌がらせ
- 世代間ギャップによる価値観の相違
- 患者や患者家族とのトラブル及び対応
- 医師との関係性
- 意思疎通
人間関係の問題は、看護師の精神的なストレスを高め、仕事へのモチベーションを低下させます。
改善するには、職場全体でのコミュニケーションの活性化や相互理解を深める取り組みが必要です。劣悪な職場環境は、それ自体が当たり前になっているので、簡単には変えられません。
人間関係の問題から解放されるために離職を選ぶ人もかなり多いです。
労働環境の不満
労働環境への不満も離職理由として大きいです。多くの看護師が、過酷な労働条件や職場環境に悩まされています。
労働環境への不満の主な原因は以下のとおりです。
- 長時間労働・頻繁な残業
- 取りにくい休日及び有給休暇
- 夜勤や変則勤務による身体的負担
- 低賃金・適切に支払われない残業代
- 過度な業務量
- 医療機器及び設備の不足・老朽化
- ウイルス感染・医療事故のリスク
- 患者や家族からのクレーム対応
- 医師や上司からの過度なプレッシャー
- キャリアアップができない
- 研修制度の不足
- 反映されない意見
上記の状況下では、看護師が仕事にやりがいを感じられなくなります。結果として多くの看護師がワークライフバランスを崩し、ストレス管理が困難になります。
多くの要因が積み重なり、最終的に看護師の離職率の高さにつながっているのが現状です。
スキルアップやキャリアアップ
スキルアップやキャリアアップが望めないことも、看護師が離職を考える理由の一つとなります。より専門的な知識や技術の習得や新しい分野への挑戦を望んでいる看護師も多いからです。
スキルアップやキャリアアップにはさまざまな種類があります。多くの看護師が持つ具体的な目標は以下のとおりです。
- 新しい分野や専門性の高い領域への挑戦
- より高度な医療技術の習得
- 管理職やリーダーシップの役割への挑戦
- 特定疾患や治療法に特化したスペシャリストへの挑戦
- 看護教育や研究キャリアへの転向
- 海外での看護師経験
- 訪問看護や在宅医療など異なる看護分野への挑戦
- 認定看護師や専門看護師などの資格取得
- 病院経営や医療政策に関わるキャリアの追求
現在の職場環境では目標達成は難しいと感じ、キャリアアップのために離職を選択する看護師もいます。
身体的・精神的な負担
看護師の仕事は身体的にも精神的にも大きな負担がかかる職種です。
負担がかかり続けることで多くの看護師が心身ともに疲れ果てた状態に陥ってしまいます。結果的に離職の選択肢を取ることになります。
主な負担として挙げられるのは以下のとおりです。
- 長時間労働や夜勤
- 患者や患者家族への対応
- 医療ミスへの不安
- 人手不足
- 休憩時間の不足
- 不規則な食事
- 感染症リスクへの恐怖や緊張
- 急変時の対応による精神的プレッシャー
- 業務の複雑化による知識・スキル習得の負担
- 職場の人間関係によるメンタルヘルスの悪化
仕事と私生活のバランスが崩れることで、慢性的な疲労感に悩む看護師も多いです。
慢性的な疲労が積み重なり、放置していると体調不良やメンタルヘルスの不調を来たすリスクも高まります。
看護師が離職を考えるときのポイント
看護師の離職を考える際に重要なポイントを紹介します。以下の4つのポイントを押さえることで、より良い転職が可能です。
- 転職の目的と条件を書き出す
- キャリアやスキルを振り返る
- 転職エージェントを利用する
- 退職から転職までの流れを計画しておく
転職の目的と条件を書き出す
看護師の転職活動を成功させるためには、転職の目的と条件の明確化が重要です。
現在の職場での問題点や不満を具体的にリストアップすることで、転職後に改善したい点が明確になります。
転職の目的と条件を明確にして整理することで、自分に合った求人を効率的に探せます。以下のような労働環境や待遇などの具体的な希望を決めておきましょう。
- 希望する勤務形態
- 勤務地
- 通勤時間の上限
- 給与や福利厚生の条件
- 転職後のキャリアプラン
専門性を活かせる分野や新しく挑戦したい分野がある場合は、必要な資格や経験などを把握しておくことも必要です。ワークライフバランスや家庭との両立、自己啓発の時間など、個人の価値観にもとづいて優先順位を決めることをおすすめします。
実際に転職活動を始める際は、タイミングや期限を設定しておいてください。具体的な目標があることで計画的に転職活動を進められます。
キャリアやスキルを振り返る
自分のキャリアやスキルを振り返ることは、転職を考えるうえで重要です。自分の強みや弱みを把握し、今後のキャリアプランを立てやすくなります。
以下の項目を整理しておきましょう。
- 経験年数
- 勤務した診療科
- 取得した資格や専門スキル
- 得意な看護技術や患者対応
- 苦手な分野
- 今後伸ばしたいスキル
- 過去の実績や評価された点
- 自分の強みや特徴
上記の点を客観的に分析することで、自己PRポイントが明確になります。キャリアビジョンや将来の目標を再確認したうえで、興味のある新しい分野や役割について考えてみるのもおすすめです。
自分のキャリアやスキルを振り返ることで、転職活動の方向性が明確になり、自分にあった求人を見つけやすくなります。面接時のアピールポイントも整理できるため、転職活動をスムーズに進められます。
転職エージェントを利用する
転職エージェントの利用は、看護師の転職活動を効率良く進めるうえで有効な手段です。
専門知識を持つコンサルタントのサポートを受けられるので、客観的で適切なアドバイスを得られます。
転職エージェントを利用する具体的なメリットは以下のとおりです。
- 非公開求人へのアクセス
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 面接対策・練習
- 条件交渉のサポート
複数のエージェントを利用すれば、多くの情報や選択肢を得られるメリットがあります。より専門的なサポートを受けるために、看護師に特化したエージェントを選ぶのがおすすめです。
多くの転職エージェントは無料で利用できるので、金銭的な負担もありません。転職後のアフターフォローがある場合もあり、長期的なキャリア支援が受けられます。
退職から転職までの流れを計画しておく
転職先での内定が貰えた後は、今の職場を退職する段取りが必要になります。
退職から転職までの流れで重要なポイントは以下のとおりです。
- 新しい職場の入職日の確認
- 師長に退職の意向を伝える
- 今の職場の退職日の確認
- 健康保険や年金、住民税の手続き
ほとんどの人は職場に黙って転職活動を行います。転職先が決まってから現在の職場を退職することを伝えるので、トラブルに発展する可能性もあります。
新しい職場の入職日は決まっているのに退職の手続きがスムーズにいかないと、せっかくの転職活動が無駄になってしまうこともあります。可能であれば、転職活動を始める際は職場にもその旨を伝えておく方がその後の手続きがスムーズに進みます。
そうは言っても、職場の雰囲気的に転職や退職を言い出せない場合も多々あります。どうしても自分では退職を切り出せない場合や、面倒なやり取りをせず、簡単に確実に退職したい場合は退職代行サービスを使うのも一つの手です。
まとめ
看護師の離職率や離職理由、転職を考える際のポイントについて詳しく解説しました。
看護師の仕事はやりがいがある一方で、心身の負担や待遇面など、さまざまな理由から離職や転職を考えている方も多いです。離職する際は、自分の目的や条件を明確にし、冷静にキャリアを見つめ直すことが必要になります。
キャリアチェンジに不安がある方は、転職エージェントを活用すれば、効率良く理想の職場を見つけられます。多くの病院で看護師が不足している今、キャリアアップや待遇改善のチャンスもあるので、前向きに検討してみましょう。