- 退職代行を使おうと思っているけど、本当に退職できるか不安…
- トラブルにはどんなものがあるのか知りたい
- トラブルに巻き込まれないためにはどうすれば良いのか知りたい
仕事を辞めたいけれど、劣悪な職場環境により、職場に退職の話を切り出せない人は多いです。退職代行は便利なサービスですが、サービスを利用する際にさまざまなトラブルが発生する可能性があります。
退職代行業者の数は増えているため、適当な業者を選択すると退職に失敗するリスクがあります。また、退職代行を利用するにあたって、必要な知識がないと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
この記事では、退職代行で起こりうるトラブル事例や退職代行の選び方、トラブルを避けるための方法を解説します。この記事を読めば、退職代行サービスを利用する際に、トラブルのリスクから身を守ることが可能です。
退職代行で起こりうるトラブル事例
退職代行サービスを利用する際に起こりうる10のトラブル事例を紹介します。実際に起こりうる事例を知れば、トラブルの事前回避が可能です。
- 会社に退職を拒否されてしまう
- 有給休暇を消化できない
- 退職金や未払い給与を受け取れない
- 会社から直接電話がかかってくる
- 懲戒解雇(クビ)になってしまう
- 会社から損害賠償を請求される
- 依頼途中で業者と連絡が取れなくなる
- 追加料金が発生してしまう
- 違法業者に依頼してしまい退職できない
- 依頼前なのにキャンセル代を請求される
会社に退職を拒否されてしまう
退職代行サービスを利用しても、会社が退職を認めないケースがあります。人手不足や重要プロジェクトの途中である場合に起こりがちです。「今辞められると困る」「引き継ぎが終わるまで待ってほしい」といった理由で拒否されるケースが挙げられます。
民法第627条では、労働者の退職の自由が認められています。正社員など期間の定めのない雇用の場合、退職の申し出をしてから2週間で退職可能です。会社が退職を拒否しても、法律上は2週間経過すれば退職が成立します。
会社の許可は必要ありませんが、民法の原則を理解していない会社が退職の手続きをしないケースがあります。
有給休暇を消化できない
退職時に残っている有給休暇を消化できないトラブルも多いです。会社側が「業務に支障が出る」「前例がない」などの理由で、有給休暇の取得を認めない場合があります。しかし、有給休暇の取得は労働者の権利です。
労働基準法第39条では、2019年4月から労働者の有給休暇取得の権利が定められています。年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、年5日以上の有給休暇を取得させることは企業の義務です。
退職金や未払い給与を受け取れない
退職代行サービスの利用で、退職金や未払い給与が支払われないケースがあります。中小企業でよく起こるトラブルです。退職金については、会社の規定によって支給条件が異なります。「自己都合退職の場合は支給しない」「勤続3年未満は支給しない」といった条件がある会社も存在します。
ただし、未払いの給与については労働基準法で支払わなければならないと定められています。
会社から直接電話がかかってくる
退職代行サービスを利用しても、会社から直接連絡が来る場合があります。会社が直接連絡してくる理由は以下のとおりです。
- 退職の意思を本人に確認したい
- 退職理由を詳しく聞きたい
- 引き継ぎや残務について相談したい
- 退職を思いとどまってほしい
退職代行業者は、本人には連絡を入れないように伝えておいてくれますが、場合によっては電話がかかってくることもあります。退職理由や引継ぎ等については、退職代行業者との打ち合わせの時にしっかり伝えておくことが重要です。
懲戒解雇(クビ)になってしまう
退職代行サービスの利用が原因で、懲戒解雇になってしまうケースがあります。懲戒解雇は通常の退職と異なり、退職金が支給されないなど、従業員にとって不利益が大きい解雇方法です。しかし、懲戒解雇の対象となるのは、以下のような重大な違反行為があった場合のみです。
- 無断欠勤が続いた場合
- 会社の機密情報を漏洩した場合
- 職場内でハラスメント行為をした場合
- 業務上の重大な過失や不正があった場合
退職代行サービスの利用自体は懲戒解雇の対象にはなりません。しかし、利用過程で無断欠勤が続いたり、引き継ぎを全く行わなかったりした場合は、懲戒解雇のリスクが高まります。
明らかな過失がない限り、労働者をクビにすることはできません。
会社から損害賠償を請求される
退職代行サービスの利用が原因で、会社から損害賠償を請求されるケースがあります。突然の退職によって、会社に大きな損害が生じた場合に起こりやすいトラブルです。損害賠償が請求される可能性がある状況には、以下のようなものがあります。
- 重要プロジェクトの途中で突然退職した場合
- 適切な引き継ぎを行わなかった場合
- 退職時に会社の機密情報を持ち出した場合
- 退職後に競合他社へ転職し顧客を奪った場合
重要なのは、実際に損害が生じている場合や、今後の多大な損害が明白である場合にしか損害賠償請求は成立しないという点です。
退職自体は労働者の権利です。退職代行サービスを使用したとしても適切な手続きを踏んで退職する限り、損害賠償を請求される可能性は低くなります。めったにありませんが、損害賠償請求されるリスクがある場合は弁護士の退職代行に依頼するようにしましょう。
依頼途中で業者と連絡が取れなくなる
退職代行サービスに依頼したにも関わらず、途中で業者と連絡が取れなくなるケースがあります。信頼性の低い業者を選んでしまうと、トラブルに巻き込まれる可能性が高いです。業者と連絡が取れなくなると、以下のような問題が発生します。
- 退職手続きが完了しない
- 会社とのやり取りが中断する
- 支払った料金が無駄になる
- 精神的ストレスが増大する
- 新たな業者を探す手間が生じる
料金を振り込んだ後に連絡が取れなくなるのは典型的な悪徳業者です。信頼できる業者を選べば、安心して退職代行サービスを利用できます。業者選びは慎重に行いましょう。
追加料金が発生してしまう
退職代行サービスを利用する際、予想外の追加料金が発生するケースがあります。料金体系が不透明な業者を選んでしまうと、トラブルに遭いやすいです。追加料金が発生する主な理由は以下のとおりです。
- 基本料金に含まれないサービス
- 交渉が長引いた場合の費用
- 書類作成や提出の手数料
- 退職金や未払い給与の請求
- 緊急対応の追加費用
料金面で不安がある場合は、複数の業者を比較検討しましょう。透明性の高い料金体系の業者を選ぶと、予想外の出費を防げます。
公式サイトにある「特定商取引に基づく表記」をしっかり読んでおくことも重要です。
違法業者に依頼してしまい退職できない
退職代行サービスを利用する際、違法な業者に依頼してしまうと退職できません。違法業者は料金は安いですが、リスクが高いのが特徴です。違法業者の特徴は以下のとおりです。
- 運営元が不明確
- 法的根拠のない交渉
- 極端に安い料金設定
- 実績や評判が不透明
- サポート体制が不十分
合法的に運営されている退職代行サービスを選べば、安全に退職手続きを進められます。「労働組合運営」と書いてあるのに、労働組合の情報がどこにも掲載していない業者もあります。
公式サイトの実績や口コミは基本的に信じない方が良いです。
依頼前なのにキャンセル代を請求される
退職代行サービスを検討中に、一旦保留にすると依頼前なのにキャンセル代を請求されるケースがあります。悪質な業者は、不当な請求を行う可能性があるため、注意が必要です。本来、キャンセルというのは料金を支払って契約後に成立するものです。信頼できる業者は、依頼前の相談段階でキャンセル代を請求しません。
キャンセルポリシーが明確で、利用者に配慮した対応をする業者を選びましょう。不当な請求を受けた場合は、消費者生活センターに相談しましょう。
トラブルを避けるための退職代行の選び方
退職代行サービスを利用する際、適切な業者を選ぶとトラブルを回避できます。信頼できる業者を見極めるポイントと、安全に利用するための注意点は以下のようになります。慎重に選んで、スムーズに退職しましょう。
- 労働組合が運営、もしくは提携しているサービスを選ぶ
- 返金保証や後払いに対応しているか確認する
- 料金が相場と比べて適切なサービスを選ぶ
- キャンセルポリシーを事前に確認する
- 口コミや退職成功実績は参考程度にする
労働組合が運営、もしくは提携しているサービスを選ぶ
弁護士以外で退職代行サービスを選ぶ際、労働組合が運営または提携しているものを選ぶのが賢明です。労働組合が運営または提携しているサービスのメリットは、以下のとおりです。
- 法的な裏付けがある
- 交渉力が強い
- 労働者の権利に詳しい
- コストパフォーマンスが良い
- 信頼性が高い
労働組合は団体交渉権を持つため、会社との交渉が必要な場合に強みを発揮します。有給休暇の取得や未払い賃金の請求など、労働者の権利に関わる問題に対応可能です。民間企業が単独で運営するサービスでは、法的な交渉権がないため、対応できる範囲が限られます。
労働組合が運営または提携している退職代行サービスを選ぶと、安心して利用できます。料金面でも民間企業が単独で運営しているサービスと比べて大差なく、コストパフォーマンスに優れています。退職時のトラブルを最小限に抑えたい方におすすめです。
費用は高くなりますが、弁護士が運営している退職代行サービスは言わずもがな安心・安全・確実です。
返金保証や後払いに対応しているか確認する
退職代行サービスを選ぶ際は、返金保証や後払いに対応しているかを確認しましょう。返金保証とは、サービスが約束通りに提供されなかった場合に、料金を返金する制度です。退職代行の場合は、実際に退職できなかった場合が返金対象になります。後払いは、退職が完了してから料金を支払うシステムです。以下の点に注目して選びましょう。
- 返金保証の条件
- 返金の範囲と期間
- 後払いの支払い期限
- 分割払いの可否
- キャンセル時の扱い
返金保証があると、万が一サービスに不満があっても安心です。後払いシステムを採用している業者なら、退職が完了するまで、料金を支払う必要がないので安心です。返金保証や後払いの条件は、業者によって異なります。契約前に必ず詳細を確認し、自分に合ったサービスを選びましょう。
料金が相場と比べて適切なサービスを選ぶ
退職代行サービスを選ぶ際、料金の適切さは重要なポイントです。相場と比較して妥当な料金設定のサービスを選ぶと、不必要な出費を抑えられます。退職代行サービスの料金相場は、運営元によって異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
運営母体 | 労働組合が直運営 | 弁護士法人が運営 | 労働組合と提携 | 民間企業単独 |
---|---|---|---|---|
相場 | 2~3万円 | 5~10万円 | 2~3万円 | 1~3万円 |
料金が安すぎる場合、サービスの質が低かったり、隠れた追加料金があったりする可能性があります。逆に高すぎる場合、必要以上の出費になる恐れがあります。適切な料金のサービスを選ぶために、運営元に応じた相場を必ず確認してください。
口コミや評判も参考になります。料金だけでなく、サービスの質や信頼性も考慮して選びましょう。複数の業者を比較検討して、適切な料金で質の高いサービスを受けるとスムーズに退職できます。
キャンセルポリシーを事前に確認する
退職代行サービスを利用する前に、キャンセルポリシーを確認しましょう。キャンセルポリシーを知っておけば、不要なトラブルや費用負担を避けられます。キャンセルポリシーで確認すべきポイントは、以下のとおりです。
- キャンセル可能な期間
- キャンセル料の有無と金額
- 返金の可否と条件
- キャンセル手続きの方法
- 依頼後のキャンセル対応
多くの業者は、契約後や退職手続き開始後のキャンセルには対応していません。中には柔軟な対応をする業者もありますが、一度会社への連絡を行ってしまうとキャンセルはできません。不明な点があれば、必ず事前に問い合わせて確認してください。
口コミや退職成功実績は参考程度にする
退職代行サービスを選ぶ際、口コミや退職成功実績は参考になりますが過信は禁物です。客観的に判断するために、適切な情報の見方を知っておきましょう。口コミを参考にする際の注意点は、以下のとおりです。
- 極端な評価に惑わされない
- 複数の情報源を比較する
- 具体的な体験談に注目する
- 最新の口コミを重視する
基本的に公式サイトに掲載している口コミは、実際の口コミではない可能性が高いと思った方が良いです。また、退職実績数は実証できるものがないので過信しないようにしましょう。
口コミや実績は参考程度に留め、サービス内容や料金、対応の丁寧さなど総合的に評価して最終判断しましょう。自分の状況に合ったサービスを選ぶのが大切です。
Google mapの口コミは、業者による偽装がしにくいため、比較的信頼できる判断材料です。
退職代行でトラブルを避けるためのアクションプラン
退職代行サービスを利用する際、トラブルを避けるために事前の準備が重要です。適切なアクションプランを立てると、スムーズな退職につながります。以下でアクションプランを紹介します。
- 残りの有給日数を確認しておく
- 就業規則の退職金に関する扱いを確認する
- 退職後の給与の受け取り方法を確認する
- 備品を会社に置いておく
- 私物を持ち帰っておく
残りの有給日数を確認しておく
退職代行サービスを利用する前に、残りの有給休暇日数を確認しましょう。有給休暇は労働者の権利であり、退職時に消化できるかは重要なポイントです。有給休暇の確認方法は以下のとおりです。
- 給与明細を確認する
- 人事部門に問い合わせる
- 社内システムで確認する
- 上司に聞く
- 労働条件通知書を見直す
有給休暇の日数がわかったら、退職日までに消化できるか計画を立てましょう。退職代行サービスに依頼する際、有給休暇の消化についても相談できます。退職代行サービスを利用する際は、有給休暇の取り扱いについて明確にしましょう。
就業規則の退職金に関する扱いを確認する
退職代行サービスを利用する前に、就業規則で退職金に関する扱いを確認しましょう。退職金の有無や金額は、退職後の生活設計に大きく影響します。退職金に関して確認すべきポイントは、以下のとおりです。
- 退職金制度の有無
- 支給条件(勤続年数など)
- 計算方法
- 支給時期
- 自己都合退職の場合の扱い
退職金の規定は企業によって異なります。勤続3年以上で支給、役職や年齢によって金額が変わるなどのケースがあります。自己都合退職の場合、減額されたり支給されなかったりする可能性もあるので注意が必要です。就業規則を確認しても退職金の詳細がわからない場合は、人事部門に確認しましょう。
退職代行サービスに依頼する際は、退職金に関する情報を伝えておくと、より適切なアドバイスを受けられます。退職金は大切な権利なので、確実に受け取れるよう準備しましょう。
退職後の給与の受け取り方法を確認する
退職代行サービスを利用する前に、退職後の給与の受け取り方法を確認しましょう。退職後の給与受け取りに関する確認事項は以下のとおりです。
- 最終給与の支払い日
- 支払い方法(振込or現金)
- 振込先口座の確認
- 未払い残業代の有無
- 給与明細の受け取り方
多くの企業では、通常の給与支払い日に最終給与が支払われます。振込先の口座が変更になる場合は、必ず会社に連絡しましょう。
給与明細は、郵送や電子データによる受け取りになるケースが多いので、送付先の住所やメールアドレスを正確に伝えましょう。退職代行サービスに依頼する際は、給与に関する情報を共有しておくと、スムーズに手続きを進められます。最終給与の受け取りに問題が生じないよう、しっかりと準備しましょう。
備品を会社に置いておく
退職代行サービスを利用する際、会社の備品の返却は重要なポイントです。トラブルを避けるために、適切に対応しましょう。会社に返却すべき主な備品を紹介します。
- パソコンや携帯電話
- 社員証やIDカード
- 鍵やセキュリティカード
- 制服や作業着
- 名刺や会社のカタログ
備品の返却方法は会社によって異なり、職場に置いていくか郵送で返却する必要があります。退職代行サービスを利用する場合、備品の返却方法についての相談が可能です。備品を紛失したり故意に持ち帰ったりすると、トラブルの原因になります。
最悪の場合、法的責任を問われる可能性もあるので注意が必要です。不明な点がある場合は、退職代行サービスや人事部門に確認しましょう。事前にきちんと対応しておくと、退職後に備品の返却を求められるトラブルが起きません。
私物を持ち帰っておく
退職代行サービスを利用する前に、職場にある私物を持ち帰っておきましょう。退職後に私物を取りに行くのは難しい場合があるため、事前に対処しましょう。持ち帰るべき私物は、以下のとおりです。
- 文具や事務用品
- 本や雑誌
- 写真や装飾品
- マグカップや食器
- USBメモリやハードディスク
私物を持ち帰る際は、会社の備品と間違えないよう注意してください。大量の私物がある場合や、すぐに持ち帰れない場合は、退職代行サービスに相談してください。会社に事情を説明し、後日取りに行く方法を提案してくれる場合もあります。
私物の中に重要な書類や個人情報が含まれている場合は、注意が必要です。適切に処理または持ち帰り、情報漏洩のリスクを避けましょう。
まとめ
退職代行サービスは、直接会社と交渉するのが難しい場合に便利なサービスです。利用する際はトラブルを避けるため、慎重に業者を選び、適切な準備をしましょう。弁護士や労働組合が運営もしくは提携する信頼性の高いサービスを選び、返金保証や料金の適切さを確認するのが大切です。
有給休暇や退職金、給与の受け取り方などを事前に確認し、備品の返却と私物の持ち帰りも忘れずに行いましょう。本記事で紹介した点を押さえれば、スムーズに退職できます。