- 公務員試験対策に必要な時間はどれくらい?
- 保健師の公務員試験対策はいつから始めれば良い?
- どの科目にどれくらい時間をかければ良いの?
行政保健師になるためには公務員試験に合格する必要があります。公務員試験は自治体によって差はあるものの、多くの試験科目があり、いつから勉強や対策を行えば良いか分からないという人も多いでしょう。
試験勉強や対策に費やすべき時間は科目によって異なるため、優先度や重要度を理解した上で効率的に勉強や対策を進めないと合格から遠ざかってしまいます。
私は看護師としてフルタイムで働き、夜勤もしながら独学で公務員試験に合格し行政保健師に転職しましたが、行政保健師の公務員試験の情報は少なく本当に苦労しました。
この記事では、当時の自分が試行錯誤した経験をもとに公務員試験の試験科目ごと勉強・対策時間の目安について解説します。
公務員試験は一次試験と二次試験で構成される
公務員試験の試験内容は自治体により異なりますが、例として以下のような構成をとります。
A | B | C | D | E | |||||
一 次 試 験 | 教養試験 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基礎能力検査(SPI) | |||||||||
専門試験 | |||||||||
小論文 | |||||||||
二 次 試 験 | 面接① | ||||||||
面接② | |||||||||
グループワーク等 | |||||||||
適性検査 |
※小論文に関しては一次試験時に解答し、二次試験の得点として採点をする自治体が多いです。
公務員試験は試験科目が非常に多いです。試験科目ごとに、合格するためにはどれくらいの勉強・対策時間を確保すれば良いのかを知っておくことが合格への近道です。
続いて、合格に必要な勉強・対策時間について解説していきます。
公務員試験合格に必要な勉強時間は1000時間!?
公務員試験の勉強時間の目安は地方上級クラスで1,500時間と言われることが多いです。『地方上級』とは公務員試験の試験区分で、自治体によって言い方は異なりますが保健師は地方上級の区分です。
1,500時間というのは、一般的に行政職を基準に言われているものです。行政職は倍率が高くなりやすく、一次試験での合格ラインが高めに設定されています。また、専門試験の難易度もやや高く出題範囲も広いです。
とは言え、保健師の区分も地方上級クラスなので教養試験と専門試験が課される場合は多くの勉強時間が必要です。保健師の場合は1,000時間程度がひとつの目安だと思って下さい。
私は仕事の日は2~3時間、休日は8~10時間を8か月かけて対策したので約1,000時間になります。
独学の場合で【教養試験+専門試験+小論文+面接】という試験構成の自治体を受験する場合、対策期間の目安は以下のようになります。
一週間の勉強時間 | 対策期間目安 |
---|---|
40時間(6時間弱/日) | 6か月 |
30時間(4時間弱/日) | 8か月 |
20時間(3時間弱/日) | 12か月 |
あくまで目安なので、例えば試験科目が少ない自治体を一つだけ受験する場合はより少ない時間で合格することは十分可能です。
教養試験/基礎能力検査(SPI試験)の特徴・勉強時間は?
教養試験とSPI試験の特徴とポイントは以下のとおりです。
- 教養試験は範囲が膨大なので対策に時間がかかる
- SPI試験は難しい試験ではないが対策は必要
- 教養試験とSPI試験の両方が課されることはない
近年は受験者数の確保を目的に教養試験を廃止する自治体も増えてきています。教養試験の代わりに基礎能力検査(SPI試験)を採用する自治体もみられます。
公務員試験における基礎能力検査(SPI試験)は、『教養試験の代わり』なので教養試験と基礎能力検査(SPI)の両方が課されることはありません。
依然、教養試験を採用している自治体はまだ多いので、希望する自治体の試験内容はしっかり確認しましょう。
続いて、教養試験とSPI試験に必要な勉強時間について解説します。
- 教養試験は最低でも半年は対策が必要
- 基礎能力検査(SPI試験)は2~3か月は対策したい
教養試験は最低でも半年は対策が必要
教養試験の対策には多くの時間を要します。その理由は以下のとおりです。
- 出題範囲が非常に広いから
- 対策をしないと解けない問題ばかりだから
- 馴染みのない科目や分野の勉強が必要だから
教養試験は以下のように5科目20以上の分野で出題されます。
教養試験の内容は高校レベルの知能や知識を問うものになりますが、出題範囲が非常に広く、履修していない分野も必ず入っているので全ての科目と分野に時間を均等にかけていては絶対に時間は足りません。
初学で取り掛かるには時間のかかる分野も多いです。例えば、「マクロ経済学」や「ミクロ経済学」などは全く触れたことのない人が一から学ぶのは非常に大変で非効率的です。
知っていないと解けない問題ばかりです。
教養試験で出題される分野は文系科目寄りなので、そういう意味では保健師にとっては難易度が高いです。しかし、それは他の行政保健師を目指す受験者も同じです。
膨大な出題範囲を効率的に学び、頻出・重要問題を確実に得点することが教養試験対策のポイントですが、ポイントを抑えて学習しても合格圏に到達するためには半年程度の時間は必要です。
基礎能力検査(SPI試験)は2~3か月程度は対策したい
基礎能力検査(SPI試験)の特徴は以下のとおりです。
- 数ある『適性検査』の中の一つ
- その中で基礎的な知能を検査するものがSPI
- 難解な問題はないが、対策は必須
- 2~3か月対策すれば基本的には大丈夫
ややこしいので図解します。
適性検査の種類は非常に多いです。様々な職種が大勢受験する公務員試験では最もシェアの高いSPI3が採用されていることがほとんどです。
『能力検査』は文章文題や計算問題などの知能試験で、『性格検査』は心理テストのようなものです。
SPI3の「3」はバージョンです
SPI ➡SPI2➡SPI3(現行)へとバーションアップしています。試験では常に最新バージョンが使用されるので、「SPI」と表記されているものは全て「SPI3」を指します。
SPIは『言語分野』と『非言語分野』で構成されます。簡単に言うと、国語と算数です。
問題自体の難易度は中学レベルなので、考える時間があれば解ける問題ばかりです。試験の難易度を上げているのは制限時間の短さです。問題によっては一問数秒~数十秒で解かなければなりません。
SPIは公務員試験のみならず一般企業でも採用されている試験であり、時々『試験対策は不要』とアピールしているところを見かけます。しかし、対策は絶対に必要です。
SPIは圧倒的に制限時間が短いため、思考停止した瞬間アウトです。解けない問題に執着していると時間がどんどん無くなり、精神的にも追い詰められ、解ける問題も解けずに時間終了ということがよくあります。
問題を見た瞬間に解法が思いつく訓練をすることがSPIの対策のポイントです。
SPIの対策時間ですが、SPI対策の参考書を1~2冊購入して2~3周すればとりあえず合格ラインに達することができるでしょう。一気に短期間で取り組むよりも、ある程度の期間をかけながら慣れていった方が効果的なので2~3か月程度かけて対策することをおすすめします。
専門試験は教養試験と同じくらい勉強時間が必要
保健師の専門試験は専用の参考書が無く、調べても情報がないため対策方法が分からないという声も多いです。
結論、対策は国家試験に準じたもので問題ありません。が、国家試験の問題に加えて、病気や病態についてやや深く問われる問題も出題されることが多いです。
- 基本的な勉強方法は国家試験と同じ
- 病気や病態についての知識を問う問題も出る
- 出題範囲が広いので教養試験と同じくらい勉強時間が必要
基本的な勉強方法は国家試験と同じ
保健師の専門試験対策では『クエスチョンバンク(QB)』と『レビューブック』があれば十分です。『公衆衛生がみえる』はあれば便利かもしれません。
教材が多すぎても全てを有効活用できる自信がなかったため、私は『クエスチョンバンク』と『レビューブック』の2冊で勉強し合格しました。
出題分野は、どの自治体でも以下のように国家試験と同様です。
- 公衆衛生看護学
- 疫学
- 保健統計学
- 保健医療福祉行政論
クエスチョンバンク(QB)では『学校保健』と『産業保健』については上記4分野とは別分野として掲載されています。この2分野については、関連問題が出題される可能性はありますし、ボリューム自体が小さく勉強にもそれほど時間がかかる分野ではないのでやっておいた方が無難です。
病気や病態についての知識を問う問題も出る
私が実際に試験を受けてみて感じたことは、『保健師の国家試験と同様に考え方やアセスメントを問う問題が基本になっているが、公務員試験の専門試験はそれに加えて知識を問う問題が結構多い』ということです。
例えば以下のようなものです。
- 性感染症(HIV・梅毒・クラミジア)の病態や治療方法
- 風しんと麻しんの違い、感染経路
- 結核の接触者健診の範囲の決め方
- レジオネラの感染源
どちらかというと看護師の国家試験にも出そうな問題もいくつか見かけました。
出題範囲が広いので教養試験と同じくらい勉強時間が必要
専門試験は国家試験の対策+αが必要なので、教養試験と同じくらい勉強時間の確保が必要です。他の試験科目の対策も並行して進める必要があるため、最低でも半年くらいは対策したいところです。
受験を決めた日からコツコツ取り掛かりましょう。
小論文はある程度訓練をすれば誰でも合格点が取れる
小論文は与えられたテーマや課題に対して自身の考えや意見を論理的に記述する試験で、大体1,000字~1,500字で原稿用紙に解答します。
特別区では、保健師には保健師用の論文課題が出題されますが、その他の自治体では基本的に全受験生に共通の論文課題が出題されることが多いです。つまり、事務職や他の専門職と全く同じように出題され、同じように採点されます。
- 無難に合格点の小論文を書くことが目標
- 2~3か月あれば合格点の小論文は書けるようになる
無難に合格点の小論文を書くことが目標
公務員試験における小論文のポイントは以下のとおりです。
- 高い文章力やセンス、ひらめきは不要
- 課題を正確に読み解いて自分の考えを論理的に書く
- 一定のレベルまで達すれば合格点が取れる
課題が共通なので、多くの受験生が解答する内容に大きな差は生まれません。採点者がうなるような考えやアイデアが書ければ高得点を取ることができるかもしれませんが、ごく少数の高得点層に入る必要はありません。
無難に合格点の文章を書けるようになることが目標です。
2~3か月あれば合格点の小論文は書けるようになる
公務員試験の小論文はしっかり対策すれば2~3か月で合格点を取れるようになります。
ますは教養試験や専門試験の対策が優先ですが、これらの勉強が軌道に乗ってきたら少しずつ小論文の対策を始めるようにすると良いです。
小論文の参考書は一冊で良いので必ず買ってください。
面接は『対策』というよりは『準備』
社会人の人なら面接を受けた経験があると思います。学生の人は、ちゃんとした面接を受けたことが無い人が多いと思います。
面接のポイントは以下のとおりです。
- 想定される質問への回答は全て用意しておく
- 「なんとかなる」はどうにもならない
- 模擬面接はできるならやった方が絶対に良い
面接で聞かれる内容はほぼ決まっています。志望動機や集団の中での自分の立ち位置、人間関係への対処法などです。なんとなく分かっていても、その場で自分の言葉で論理的に話すのは相当難しいです。
面接は、聞かれたことに対して瞬時に反応して回答する試験ではありません。聞かれるだろう質問に対する自分なりの回答を用意して相手に伝える試験です。
自分の考えを言語化して相手に伝えるには事前の準備が必要です。
他者からみた自分は、自分自身では評価できません。声量や視線、挙動などを誰かに見てもらい、相手に失礼なく思いをきちんと伝えようとする姿勢になっているかを見て貰うことをおすすめします。
適性検査(性格検査)は対策不要だが注意点を押さえる
本来、『適性検査』というのは『能力検査』と『性格検査』の総称です。ただし、公務員試験においては、二次試験で課される『適性検査』というのは基本的に『性格検査』のことを指すことが多いです。
性格検査はマークシート方式で、質問に対する受検者の感情や思考を回答するものです。
- 性格検査とは心理検査のようなもの
- とにかく正直に答えることが重要
- 落し穴的な問題には注意
性格検査とは心理検査のようなもの
性格検査は、主に受検者の思考パターンを多面的な質問により把握して職務適応能力やストレス耐性、思考の偏りなどをみるものです。
筆記試験や面接だけでは見えない受検者の心理面をチェックする検査です。もちろん合否の判定にも用いられますが、採用された後の配属先を選択する際の指標としても用いられます。
保健師の場合は配属部署の幅がないので、相当思考パターンに偏りが見られない限りは合否に影響はないと思って良いです。
とにかく正直に答えることが重要
対策は必要ありませんが、正直に答えることが大切です。なぜなら問題数が多く、膨大なデータ分析による裏付けを行う試験なので、どこかで嘘をつくと他の質問と関連して矛盾点が生まれてしまうからです。
正答がある検査ではないので、変に気負わずに臨みましょう。
落し穴的な問題には注意
注意すべき極端な落とし穴的な質問もあります。例えば、「私は嘘をついたことがない」、「無意識に人を傷付けたくなることがある」などです。
嘘をついたことがない人はいませんし、無意識に人を傷付けたくなる人は採用されません。あくまで平静な心持ちで解答できるように心がけましょう。
他にも内田クレペリン検査と言って、ひたすら単純計算を繰り返すという検査を課す自治体もあります。
まとめ
公務員試験には多くの科目があり、それぞれ対策にかけるべき時間や優先順にも違います。科目ごとの特徴を理解した上で効率的・計画的に対策を進めていくことが重要です。
- 教養試験
- 公務員試験において一番対策に時間がかかる。受験を決めたその日から対策が必要。教養試験を課す自治体は専門試験と小論文、面接も漏れなく課されるパターンが多いので、少なくとも半年以上は対策期間が必要。
- 基礎能力検査(SPI試験)
- 問題自体の難易度は低いが、制限時間がかなり厳しい。解ける問題は反射で解けるように訓練をする必要がある。対策は2~3か月くらい行えば合格点を取れる。
- 専門試験
- 保健師国家試験に準じた対策で対応可能。知識を問う問題も多いため細かい知識の理解が必要。受験を決めた日からコツコツと対策をはじめると良い。
- 小論文
- 参考書を一冊買い、文章の構成を学ぶと良い。あとはひたすらネタを収集し、それを論理的な文章構成で書けるように練習をする。試験日の2~3か月前くらいから始めても合格点の小論文は書けるようになる。
- 面接
- 通常の社会的常識があれば大きく減点されることはない。ただし、「こういうことを聞かれたらこう答える」という自分の中の回答を用意しておくことはとても重要。
- 適性検査(性格検査)
- 特別な準備は不要。正直に矛盾のないように解答することがとにかく重要。落とし穴的な質問にひっかからないように注意する。